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EBインキとは?UVインキとの違いや導入のメリット・デメリットをわかりやすく解説

インキ
印刷業界で環境対応や安全性の向上が求められる中、「EBインキ」という言葉を耳にする機会が増えていないでしょうか。この記事では、EBインキ(電子線硬化型インキ)の仕組みや特徴、そしてUVインキや溶剤インキとの違いについて解説します。読み終わると、EBインキ(EBオフセット印刷)を自社で導入するメリットや課題が整理され、具体的な設備導入の検討を進められるようになります。パッケージ開発や印刷現場の改善に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
この記事の目次
  1. EBインキとは?基本の仕組みと特徴
    • 電子線で瞬時に硬化する無溶剤インキ
    • 環境と安全性の観点から注目される背景
  2. EBインキとUVインキ・溶剤グラビアインキの違い
    • UVインキとの違いは光重合開始剤の有無
    • 溶剤グラビアインキとの違いはVOC排出と乾燥工程
  3. EBインキを導入する4つのメリット
    • 低臭気と低マイグレーションによる高い安全性
    • VOCフリーによる環境負荷の低減
    • 瞬時硬化による工程の効率化と強靭な皮膜形成
    • 熱による基材へのダメージを抑える効果
  4. EBインキの導入に向けた課題とデメリット
    • EB照射装置などの高い初期導入コスト
    • 窒素ガス発生装置などの付帯設備が必要になる点
  5. EBインキの主な活用用途・業界
    • 食品や医薬品の軟包装パッケージ
    • シックハウス対策などが求められる建材やラベル
  6. 企業の取り組み事例とEBインキの今後の展望
    • T&K TOKAによるEB硬化型インキの開発事例
  7. まとめ

EBインキとは?基本の仕組みと特徴

印刷現場で環境対応への関心が高まる中、新しいインキの選択肢としてEBインキが話題に上ることが増えています。ここでは、EBインキの基本的な仕組みと、なぜこれほど注目を集めているのかを順に見ていきましょう。全体像を把握することで、自社の課題解決に役立つヒントが見つかるはずです。

電子線で瞬時に硬化する無溶剤インキ

EBインキとは、高いエネルギーを持つ電子線を照射することで一瞬にして固まるインキを指します。溶剤型インキのように、熱を加えて溶剤を飛ばす乾燥工程を必要としません。インキ中のアクリルモノマーが電子線のエネルギーで瞬時に重合し皮膜を形成するため、UVインキで必要となる光重合開始剤を使わずに硬化させられる点も大きな特徴で、溶剤を揮発させて回収・処理する工程が発生しません。また、無溶剤であることから、揮発性有機化合物の排出を抑えられる点も大きな特徴に挙げられます。溶剤のにおいが現場にこもることもなく、作業環境の改善にも寄与します。溶剤を含まず、成分のほとんどがそのまま皮膜として定着するため、溶剤型グラビアインキと比較して顔料の比率が高く、インキの使用量を抑えやすい点も利点です。

参考:EB硬化型インキ|インキ製品|製品情報|T&K TOKA

環境と安全性の観点から注目される背景

近年、脱炭素社会への移行やSDGsへの取り組みが企業の重要な経営課題となっています。印刷現場においても、CO2の排出量やVOC(揮発性有機化合物)の削減が強く求められるようになりました。加えて、食品パッケージなどでは、内容物へのインキ成分の移行を防ぐ安全性が重視されています。こうした課題を同時にクリアできる技術として、環境と人に優しいEBインキの需要が伸びていると考えられます。法規制が厳しくなる今後の市場を見据えて、早めに情報収集を始める企業が増えている現状があります。自社のブランド価値を高めるためにも、採用を検討する価値は十分にあると言えるでしょう。

EBインキとUVインキ・溶剤グラビアインキの違い

EBインキの特徴をより深く理解するために、広く普及しているUVインキや溶剤グラビアインキと比較してみましょう。それぞれの乾燥方式や成分の違いを知ることで、自社に最適な印刷手法を選びやすくなります。以下の表で、主要な項目ごとに各インキの違いを整理しました。

インキ種類 乾燥方式 無溶剤か 光重合開始剤の有無
EBインキ 電子線照射 ノンVOC(揮発性有機化合物を含まない) 不要
UVインキ 紫外線照射 ノンVOC(揮発性有機化合物を含まない) 必要
溶剤グラビアインキ 熱風乾燥 有機溶剤を含む 不要

UVインキとの違いは光重合開始剤の有無

UVインキは紫外線を当てて硬化させる仕組みですが、その反応を起こすために光重合開始剤(Photoinitiator、PIとも呼ばれる)という成分をインキに配合しておく必要があります。一方でEBインキは、紫外線より高いエネルギーを持つ電子線を直接照射してアクリルモノマーを重合させるため、この開始剤を使う必要がありません。光重合開始剤は、それ自体や紫外線照射後に生じる分解物が特有のにおいを残したり、印刷物から食品などへ成分が移行したりするリスクが指摘されています。そのため、開始剤を含まないEBインキは低臭気で低マイグレーションを実現しやすく、食品パッケージや医薬品パッケージのように安全性が重視される用途に適しています。UVインキでにおいや成分移行に課題を感じていた方にとって、有力な代替手段となり得ます。

溶剤グラビアインキとの違いはVOC排出と乾燥工程

従来のグラビア印刷などで使われる溶剤インキは、インキを乾かすために60〜80℃前後の熱風乾燥機を使用します。この過程で揮発性有機化合物が排出されるため、VOC回収装置や燃焼設備、防爆仕様の設備など、環境対応と安全対策のための付帯設備が欠かせません。対してEBインキは無溶剤で、電子線照射により紙面温度を室温+数℃程度に抑えたまま瞬時に硬化します。熱風乾燥工程そのものがなく、溶剤の揮発や、溶剤を回収・燃焼処理する工程も発生しないため、乾燥に必要なエネルギー使用量と、それに伴うCO2排出量の削減につながるとされています。印刷インキ工業会が公表しているCFP値でも、平版油性インキ(4.58 kg-CO₂/kg)や特殊グラビアインキ(4.94 kg-CO₂/kg)に対し、平版UVインキは4.01 kg-CO₂/kgとされています。EBインキ単体のCFP値は公表されていないものの、同じエネルギー硬化型のUVインキの値からは、環境負荷が相対的に低い傾向がうかがえます。ただし、EB印刷では硬化反応中の酸素阻害を避けるために窒素雰囲気下での照射が必要で、窒素発生装置のランニングコストや装置自体の導入コストも発生します。それでも、改正大気汚染防止法によるVOC排出規制や食品接触材料のポジティブリスト制度など、環境・安全規制が強化されていく流れの中で、有機溶剤を使わずに済むという点は中長期で見てもアドバンテージとなり得ます。

参考:EB硬化型インキ|インキ製品|製品情報|T&K TOKA

EBインキを導入する4つのメリット

EBオフセット印刷(EBインキ)を導入することで、企業はどのような恩恵を受けられるのでしょうか。ここでは、品質や環境面において得られる具体的なメリットを4つの視点からお伝えします。自社が抱えている課題と照らし合わせながら確認してみてください。

メリット 期待できる具体的な効果
高い安全性 低臭気かつインキ成分の移行(マイグレーション)リスクを低減できる
環境負荷の低減 VOCの排出がなく、乾燥工程が不要なためCO2の削減に寄与する
工程効率と高品質 瞬時に硬化し、耐摩擦性に優れた強靭な皮膜を作る
熱ダメージの抑制 熱を加えないため、フィルムや薄紙などの熱に弱い素材にも印刷しやすい

低臭気と低マイグレーションによる高い安全性

先ほども触れた通り、光重合開始剤を使用しないため、印刷物から特有のにおいが発生しにくく、インキ成分が食品などの内容物へ移行するリスクも低減できます。とくに乳幼児用食品や医薬品パッケージのように、わずかな成分移行も避けたい用途では、この安全性が採用の決め手となるケースもあります。

VOCフリーによる環境負荷の低減

無溶剤であるため、印刷の過程で揮発性有機化合物が大気中に放出される心配がありません。揮発性有機化合物を回収・処理するための大掛かりな設備を動かす必要がなく、その電力や運用コストを削減できます。持続可能なモノづくりを発信する上での有効な要素になり得ます。また、溶剤の回収・防爆設備が不要になることや乾燥エネルギーの削減を通じて、コスト低減にもつながります。印刷現場の作業環境の改善につながる点も、導入を検討する事業者から評価されています。

瞬時硬化による工程の効率化と強靭な皮膜形成

電子線を照射した瞬間にインキが固まるため、印刷後すぐに次の加工工程へ移ることができます。溶剤の揮発や回収にかかる設備・工程を省ける点も特徴です。また、形成された皮膜は摩擦や薬品に対して強く、印刷面の耐久性を高める効果が期待できます。

熱による基材へのダメージを抑える効果

熱風乾燥を行わないため、熱に弱いフィルムや薄い紙に対しても、熱によるダメージを抑えて印刷しやすくなります。印刷中の熱によるシワや縮みも抑えやすくなります。ただし、電子線自体が基材に影響を与える場合もあるため、採用にあたっては事前の確認が必要です。熱に弱い素材へ印刷したい場合の有力な選択肢の一つと言えるでしょう。

EBインキの導入に向けた課題とデメリット

多くの利点があるEBインキですが、導入に際してはいくつかのハードルも存在します。実際の難しさや注意点についても、あらかじめ把握しておくことが重要です。設備投資の計画を立てる前に、どのような課題があるのかを見ていきましょう。

導入時の課題 詳細と対策のポイント
高い初期導入コスト 印刷機に組み込む専用の電子線照射装置が高額になる
付帯設備の必要性 酸素濃度を下げるための窒素ガス発生装置などが必要となり維持費がかかる
設置スペースの確保 電子線発生装置が比較的大型であり、既存のグラビア印刷機への後付けは基本的に難しく、後付けが可能な印刷機においても、設置スペースの確保や工場のレイアウト変更が必要になる場合があります

EB照射装置などの高い初期導入コスト

EBインキを硬化させるためには、専用の電子線照射装置を印刷機に組み込む必要があります。この照射装置は高度な技術を用いており、一般的なUVランプなどに比べて導入費用が高額になりがちです。初期投資の回収には、ある程度の生産規模や長期的な運用計画が求められると言えるでしょう。また、電子線が外部に漏れないための防護シールドは、実績のあるEB照射装置には標準で備わっている場合が多く、後から別途必要となるケースは多くありません(メーカーによっては必要な場合があります)。また、EBオフセット印刷に用いられる装置は出力が低く比較的安全とされ、放射線取扱主任者の選任は不要で、労働基準監督署への届け出により運用でき、法令上の被ばく管理や健康診断も求められないとされています。これらの装置は大型になるケースが多く、既存のグラビア印刷機への後付けは基本的に難しいため、新たな設備の導入や工場のレイアウト変更が必要になる場合があります(ロールtoロールのUV印刷機では対応できる場合もあります)。費用対効果を見極めながら、慎重に検討を進めることが大切です。

窒素ガス発生装置などの付帯設備が必要になる点

電子線による硬化反応は、空気中の酸素濃度が高いと阻害されてしまう性質を持っています。そのため、照射部分を窒素などの不活性ガスで満たし、無酸素状態に近い環境を作り出す付帯設備が欠かせません。窒素ガスを安定して供給するための発生装置を導入し、稼働させるコストが継続的に発生します。ランニングコストを計算する際は、インキの単価だけでなく、窒素ガスの供給費用や装置の維持費も含めて、設備全体でのトータルコストを試算しておくことが大切です。

EBインキの主な活用用途・業界

EBインキの特性を活かして、すでにさまざまな分野で活用が進んでいます。特に安全性や環境配慮が求められる領域で、その強みが存分に発揮されていると言えます。具体的にどのような場面で使われているのかを見ていきましょう。

活用される主な用途 EBインキが求められる理由
食品の軟包装パッケージ インキのにおいが少なく、内容物への成分移行を防げるため
医薬品の包装 厳しい安全基準をクリアし、清潔な状態を維持できるため
住宅の建材や壁紙 揮発性有機化合物を排出しないため
日用品のラベル印刷 摩擦や薬品に強い皮膜を形成できるため

食品や医薬品の軟包装パッケージ

広く導入が進んでいる分野の一つが、お菓子やレトルト食品、医薬品などを包む軟包装の印刷です。内容物への成分移行を抑える安全性の高さから、厳しい品質基準が求められる用途での活用が期待されています。インキのにおいが食品の風味に影響しにくい点も、採用を検討する理由の一つになり得ます。

シックハウス対策などが求められる建材やラベル

住宅の壁紙や床材といった建材の印刷にも、EBインキが採用されるケースが増えてきました。生活空間で使用される建材は、シックハウス症候群の原因となるVOCの発生を抑える必要があります。無溶剤で環境に優しい特徴が、安心できる住環境づくりに貢献しています。加えて、日用品のラベル印刷など、耐久性と美しさが求められる用途でも活躍の場を広げている状況が見られます。

参考:EB硬化型インキ|インキ製品|製品情報|T&K TOKA

企業の取り組み事例とEBインキの今後の展望

実際のインキメーカーがどのようにEBインキを開発・展開しているのか、具体的な事例を見てみましょう。インキメーカーの取り組みを知ることで、業界全体の動向や今後の可能性が見えてきます。自社がパートナーを選ぶ際の参考材料にしてみてください。

企業名 取り組み事例の概要
T&K TOKA UVインキで培った技術を応用し、低臭気・低マイグレーションのEB硬化型インキを開発

T&K TOKAによるEB硬化型インキの開発事例

インキメーカーであるT&K TOKAは、UVインキで培った技術を活かし、EB硬化型インキの開発を積極的に進めています。同社の公開情報によると、開始剤を使用しないことで低臭気と低マイグレーションを実現しているとのことです。さらに、溶剤を含まないため作業環境の改善が図れる点も、大きな特徴として挙げられているようです。社会課題であるCO2排出量の削減に向けた解決策として、新しい印刷システムへの貢献を目指す姿勢が伺えます。このような開発努力によって、より扱いやすく高性能なインキが市場に供給されることが期待されます。環境配慮型インキへのシフトは、今後さらに加速していくでしょう。

参考:EB硬化型インキ|インキ製品|製品情報|T&K TOKA

参考:バイオマス対応UV硬化型インキ|インキ製品|製品情報|T&K TOKA

参考:低マイグレーション対応UV硬化型インキ|インキ製品|製品情報|T&K TOKA

まとめ

この記事の要点をまとめます。

本記事のポイント
  • EBインキは電子線で瞬時に硬化し熱風乾燥が不要な無溶剤インキである
  • 光重合開始剤を使わないため低臭気で成分移行のリスクが低い
  • VOCフリーで環境負荷が少なくCO2排出量の削減に貢献する
  • 導入時には専用の照射装置や窒素ガス設備などの初期費用がかかる
  • 食品の軟包装パッケージや建材など安全性が重視される分野での活用が期待されている

自社の抱える課題と照らし合わせながら、EBオフセット印刷(EBインキ)の導入による環境対応と品質向上の両立を検討してみてください。

また、T&K TOKAでは、電子線で瞬時に硬化し、熱風乾燥や溶剤を必要としないEB硬化型インキを取り揃えております。光重合開始剤を使わない低臭気・低成分移行の設計のため、食品の軟包装パッケージなど安全性が重視される分野にも対応可能です。VOCフリーで環境負荷の低減に貢献する製品の詳細を、ぜひリンク先のページでご確認いただけますと幸いです。

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