
- インキとは?インクとの違いや語源を解説
- インキとインクの違いは用途と粘度
- 語源から見るインキとインクの歴史
- 印刷インキを構成する3つの主成分
- 色料はインキの色を決める要素
- ビヒクルは色を紙に運び定着させる役割
- 添加剤はインキの性質を細かく調整する
- 代表的な印刷インキの4つの種類と用途
- チラシや書籍に使われる平版インキ
- 軟包装や写真集に使われるグラビアインキ
- 段ボール印刷などに適した樹脂凸版インキ
- 超高速印刷に対応する新聞インキ
- 特殊な機能を持つ印刷インキの例
- 瞬時に乾燥するUVインキ
- 環境負荷を減らすベジタブルインキ
- まとめ
インキとは?インクとの違いや語源を解説

印刷物の発注やデザイン業務に関わると、頻繁に耳にするのがインキという言葉です。まずは、インキの基本的な定義と、私たちが普段からよく使うインクという言葉との違いについて見ていきましょう。厳密な定義が存在するわけではありませんが、業界や用途、語源などによって使い分けられる傾向にあります。
インキとインクの違いは用途と粘度
インキとインクは、主に使われる場面と液体の粘度によって呼び分けられる傾向にあります。印刷業界の現場で使用されるものは、業界用語としてインキと呼ばれます。一方で、万年筆やボールペンといった筆記用具、家庭用のインクジェットプリンターなどで使われるものは、インクと呼ばれる傾向にあります。この違いは、液体の粘度に関連する性質です。印刷機で使用されるインキは、紙にしっかりと定着させるために油分が多く含まれており、ねっとりとした高い粘度を持っています。反対に、筆記用具やプリンターで使用されるインクは、水分が主体でサラサラとした低い粘度を維持しています。このような物理的な性質の違いが、呼び方の違いにつながっていると言えます。
語源から見るインキとインクの歴史
呼び方が二つ存在する背景には、それぞれの言葉が日本に伝わった経緯の違いが関係しているとされています。インキという言葉は、オランダ語の「inkt(インキト)」が語源であるという説が有力です。江戸時代、鎖国下で唯一交易のあったオランダから蘭学とともに伝わり、当時は「阿蘭陀(オランダ)墨」とも呼ばれていました。その後、明治時代に欧米から近代的な活版印刷技術が本格的に導入された時期も、業界では古くからのオランダ語由来の「インキ」という呼び方が引き継がれ、定着していったとされています。一方で、インクという言葉は英語の「ink」が語源です。明治時代以降に英語圏の文化が広く流入した際、万年筆などの新しい筆記用具とともにインクという言葉が広まりました。現代のグローバルなビジネスシーンでは英語のインクが一般的ですが、日本の印刷業界では蘭学伝来からの慣習がそのまま定着しているという経緯があります。
印刷インキを構成する3つの主成分

印刷物に色を鮮やかに再現するため、印刷インキは複数の成分が絶妙なバランスで配合されて作られています。基本的には、色を作り出す成分、それを運ぶ成分、そして性質を調整する成分の3つから構成されるものです。それぞれの役割を理解することで、印刷物がどのように仕上がるのかを把握しやすくなるでしょう。
| 成分の名称 | 役割 | 主な種類や特徴 |
|---|---|---|
| 色料 | インキに色をつける | 顔料(表面に付着)、染料(内部に浸透) |
| ビヒクル(ワニス) | 色料を運び定着させる | 油脂類、天然樹脂、合成樹脂 |
| 添加剤(補助剤) | インキの性質を調整する | 乾燥促進剤、滑剤など |
色料はインキの色を決める要素
色料とは、インキに色をつけるための基本的な成分であり、顔料と染料の二つに大きく分けられます。印刷業界のインキで主に使用されるのは、水や溶剤に溶けにくく粒子のまま分散する顔料です。顔料は紙の表面に付着して発色するため、耐久性や耐光性に優れており、ポスターや書籍など長期間保存される印刷物に適しています。一方で、染料は水や溶剤に溶け込みやすく、繊維や紙の内部に浸透して発色する性質を持っています。家庭用のインクジェットプリンターでは染料インクと顔料インクの両方が使われています。ただし染料は退色しやすいため、長期保存が前提となる印刷業界では顔料が選ばれることが多いとされています。
ビヒクルは色を紙に運び定着させる役割
ビヒクルとは、日本語でワニスとも呼ばれ、色料を印刷面に運び、しっかりと定着させるための液状成分です。英語で乗り物や荷車を意味する言葉が語源となっており、まさに色料を運搬する役割を担っています。油脂類や天然樹脂、合成樹脂などを混合して作られており、インキの流動性や光沢、乾燥の速さを決定づける重要な要素と言えます。ビヒクルが印刷機の中で適切に広がり、紙に転写された後に速やかに乾燥して固まることで、文字や画像が擦れて汚れるのを防げます。印刷の品質は、このビヒクルの性能が重要な役割を果たしているとされています。
添加剤はインキの性質を細かく調整する
添加剤は、補助剤とも呼ばれ、インキの使い勝手や仕上がりをより良くするために少量加えられる成分です。印刷する環境や紙の種類に合わせて、インキの乾燥速度を速めるドライヤー(乾燥促進剤)や、インキの滑りを良くする滑剤などが使用されています。季節による温度や湿度の変化によってインキの性質は影響を受けるため、印刷現場ではこれらの添加剤を微調整しながら、常に一定の印刷品質を保つ工夫がなされているのです。
代表的な印刷インキの4つの種類と用途

印刷インキと一口に言っても、印刷する素材や印刷機の手法に合わせてさまざまな種類が開発されています。身の回りにある印刷物も、その用途に応じて適切なインキが使い分けられているのです。ここでは、代表的な4つの印刷インキについて詳しく解説します。
| インキの種類 | 対応する印刷方式 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 平版インキ | オフセット印刷 | チラシ、ポスター、書籍、パンフレット |
| グラビアインキ | 凹版印刷(グラビア印刷) | 食品パッケージ、写真集、建材壁紙 |
| 樹脂凸版インキ | フレキソ印刷 | 段ボール、紙袋、食品包装 |
| 新聞インキ | 新聞輪転印刷 | 一般紙、スポーツ新聞、業界紙 |
チラシや書籍に使われる平版インキ
平版インキは、オフセットインキとも呼ばれ、現代の印刷業界で広く使われているインキです。水と油が反発する性質を利用した平版印刷(オフセット印刷)で使用されています。ポスター、カレンダー、チラシ、パンフレットなど、私たちが日常的に目にする紙の印刷物の大半は、この平版インキによって印刷されたものです。適度な粘度を持ち、紙への定着が良いため、写真や細かい文字を鮮明に再現できるのが特徴と言えます。多種多様な紙質に対応できる汎用性の高さから、印刷業界で広く利用されているインキです。
軟包装や写真集に使われるグラビアインキ
グラビアインキは、凹版印刷の一種であるグラビア印刷に使用されるインキです。版に彫られた細かい凹みに液状のインキを流し込み、それを対象物に転写する仕組みを持っています。インキの量を細かく調整できるため、濃淡の表現に優れており、かつては写真集や美術書の印刷に重宝されていました。現在では、食品のパッケージなどに使われるフィルム(軟包装)や、建材の壁紙など、紙以外の素材への印刷に広く活用されています。乾燥の速い溶剤が使われているため、フィルムのようなインキが染み込まない素材に対しても、高速で連続して印刷できます。
段ボール印刷などに適した樹脂凸版インキ
樹脂凸版インキは、フレキソインキとも呼ばれ、ゴムや樹脂で作られた柔らかい凸版を用いて印刷する際に使われます。版が柔軟であるため、表面に凹凸がある素材に対しても均一にインキを乗せることができるという利点を持っています。この特性から、日本では主に段ボールの表面印刷に多用されてきました。近年では、紙袋や食品包装などへの活用も進んでいます。
超高速印刷に対応する新聞インキ
新聞インキは、その名の通り新聞紙を印刷するためだけに特化して作られた専用のインキです。新聞の印刷は、1時間に最高7万部を超える極めて速いスピードで行われるため、インキには紙に触れた瞬間に素早く浸透して乾く性能が求められます。一般的な平版インキと仕組みは似ていますが、新聞特有のざらざらとした薄い紙質に合わせて成分が特別に調整されたものです。輪転機という大型の印刷機で大量の紙に連続して印刷していくため、インキの流動性も高めに設定されています。
特殊な機能を持つ印刷インキの例
通常の印刷インキ以外にも、特定の目的や課題を解決するために開発された特殊なインキが存在します。印刷技術の進歩とともに、作業効率を高めるものや、地球環境に配慮したものなど、多様な選択肢が登場してきました。ここでは、機能性に優れた二つのインキを紹介します。
| インキの名称 | 特殊な機能や特徴 | 主なメリット |
|---|---|---|
| UVインキ | 紫外線で瞬時に硬化する | 乾燥時間が不要、プラスチック等にも印刷可能 |
| ベジタブルインキ | 石油系溶剤を植物油に置き換えている | 環境負荷の低減、リサイクル適性の向上 |
瞬時に乾燥するUVインキ
UVインキは、紫外線を照射することで一瞬にして硬化し、乾燥する特殊なインキです。通常のインキは、油分が酸化重合したり、紙に浸透したりすることで時間をかけて乾燥しますが、UVインキは印刷機の出口で紫外線を当てることで乾燥(硬化)します。乾燥待ちの時間がなくなるため、印刷後すぐに裁断や折り加工といった次の工程に進むことができ、納期の短縮につながりやすくなります。また、インキが紙に染み込まずに表面で固まるため、プラスチックや金属、特殊なフィルムなど、通常のインキでは印刷が難しい素材にも鮮やかに印刷できるのが特徴と言えます。
環境負荷を減らすベジタブルインキ
ベジタブルインキは、環境保全の観点から開発されたインキです。従来のインキの主成分であるビヒクルには、石油由来の溶剤が多く含まれており、揮発性有機化合物による大気汚染が懸念されていました。そこで、石油系溶剤の一部を大豆油や亜麻仁油といった植物由来の油に置き換えたのが、ベジタブルインキや大豆油インキ(ソイインキ)と呼ばれるものです。このインキを使用することで、環境負荷を低減できるだけでなく、印刷物のリサイクル時にインキを剥がしやすいというメリットも得られます。企業の環境対策への意識が高まる中、ベジタブルインキを使用し、その証として専用のマークを印刷物に記載するケースが増えてきています。
まとめ
この記事の要点をまとめます。
- 印刷業界では粘度が高く油分の多いものをインキ、筆記用具など水性のものをインクと呼ぶ
- 印刷インキは色料とビヒクルと添加剤の3要素から構成されている
- 印刷方法や素材に合わせて平版インキやグラビアインキなどが使い分けられている
これらの基礎知識を業務に活かして、印刷会社とより円滑なコミュニケーションを図り、品質の高い印刷物制作を実現してください。
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